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コース設計家・井上誠一の世界

自然という広大なキャンパスに「美しき戦略」を描いた芸術家・井上誠一

「日本を代表するゴルフ場設計者は誰か」という問いに対して、まず思い浮かぶのが井上誠一だろう。大洗GCをはじめ、霞が関CC西コース、龍ケ崎CC、大利根CC、武蔵CCなど、日本オープンを開催した経験のあるゴルフ場を含め、数多くの名コースを手掛けた人物だ。彼が作り上げるコースの魅力、設計思想を紐解いていこう。

アリソンとの運命的な出会い

1908(明41)年、東京・赤坂の眼科医の長男として生まれた井上誠一は、21歳の時に嗜眠性脳炎を患って静岡県の川奈で療養生活を送る。この時、チャールズ・ヒュー・アリソンと出会ったことをきっかけにゴルフ場設計家としての道を歩み始めることになる。アリソンは、東京ゴルフ倶楽部・朝霞コースや川奈ホテル・富士コースを設計したデザイナー。アゴが高く、深いバンカーを“アリソンバンカー”と呼ぶのは彼の名に由来していることをご存知の方も多いだろう。

川奈でアリソンの仕事を目の当たりにした井上は、ゴルフコース設計に興味を持ち、海外からコース設計に関する書籍を取り寄せて独学でデザインを学ぶ。井上がアリソンから学んだ設計思想は、「コースは美しく、戦略的でなければならない」、そして「未開発の自然を可能な限り残し、美しいコースを造る」ということだ。以来、1931(昭6)年の霞ヶ関CC西コース建設を皮切りに計42コースを設計していくことになる。

“可能な限り自然を残す”設計思想

設計をする際、井上がまず行ったことは、造成地にじっと佇み、自然の声に耳を傾けることだった。未開発の自然を可能な限り残しながらコースを造っていく井上は、造成に入った後でも図面上にない樹木があれば、「絶対に切ってはならない」と釘を刺していたそうだ。また、妥協を許さない完璧主義者だったため、途中で設計変更を要求する発注主と決裂することもしばしばあったと言われている。

大洗GC設計時には、こんな逸話がある。当時はまだ背の低い松林が並んでいた地を見た井上は、「何十年も経てば松が自然のハザードになる。だから余計なバンカーは作らなくていい」と語ったという。自然の中から戦略性を見い出し、可能な限り自然を残すという井上の設計思想、美学が垣間見えるエピソードだ。それと同時に、数十年後のコース風景をイメージしながら設計するという彼の才能も感じることができる。大洗GCの開場当時のバンカーは30個と極端に少ない。しかし、今では松林が空中のハザードとなり、日本屈指の名コース、難コースと呼ばれているのは誰もが知るところだろう。


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