本州最北端に吹くスコットランドの風 [夏泊ゴルフリンクス(青森県)]

写真:落合隆仁(グラン)
文:小澤裕介
取材協力:夏泊ゴルフリンクス

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ひと昔前の日本人ゴルファーにとって、「いいコース」とはホール間が松林でセパレートされたフラットな林間コースだった。時代とともにその価値観は変化し、最近は丘陵コースや山岳コース、リンクスコースに魅力を見出すゴルファーが増えたようだ。日本には丘陵、山岳コースは数多くあるし、海沿いに作られたコースも少なくない。しかし、残念ながらゴルフ発祥の地スコットランドのようなリンクスコースはほとんど存在しない。本場のリンクス気分を味わいたいなら海外に行くしかない――。そう思っているなら、青森県の夏泊ゴルフリンクスを訪れてもらいたい。三方が海に囲まれたロケーション、リンクス特有の強い風、そして黄金色に輝くトールフェスキュー芝……。その景色はゴルフの故郷を彷彿させるはずだ。

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02 リンクスに絶好の立地を生かし 全面改造して92年にオープン

夏泊GLが展開するのは陸奥湾に張り出した夏泊半島の突端。三方が海に囲まれた絶景のロケーションだ。実は元々、この土地には別のゴルフ場があったのだが、海沿いの立地を生かし切れていないレイアウトだったという。当時、この地を訪れた現オーナーの海老原寿人氏は、「この立地を生かせば日本にもリンクスコースができる」と考えてコース改造に着手した。海老原氏は大学時代、ゴルフ部に所属して卒業後にアメリカにゴルフ留学。帰国後に設計を学び、アメリカやイギリスでもコースの造詣を深めた経歴の持ち主だ。「ブルドーザーで土砂を運んでイチからコースを作り直したそうです。前のコースの面影はほとんど残っていません」と教えてくれたのは支配人の最上悟氏だ。「リンクスコースを象徴するフェスキュー芝やススキも植樹し、92年に夏泊ゴルフリンクスはオープンしました」。

03 半袖でプレーできる日も 厚手のセーターは必携品

海沿いに展開するシチュエーション、ポテトチップスのようなダイナミックな起伏のあるフェアウェイ、コースを囲むフェスキュー芝、立木が少なく四方を見渡せるレイアウト、深さのあるバンカーなどは、まさにスコットランドの景色。また、「本場のリンクスコースは『一日に四季がある』といわれるほど、ラウンド中に天候が目まぐるしく変化することでも知られていますが、夏泊も同じような気候なんです。メンバーさんはスタート時に半袖でいいくらい暖かくても、必ず厚手のセーターなどを用意しています」(最上支配人)。そしてもうひとつ、リンクスコースに欠かせないのが強烈な風だ。夏泊にも体がよろめくほどの風が吹く。アゲインストとフォローでは飛距離が4番手変わるのはよくあること、と最上支配人。「残り100Yを3Wで打ったこともありますよ(笑)」とのことだ。

04 ゴルファーを悩ませる 東からの風「やませ」

梅雨明けあたりから夏頃まで、この辺りには「やませ(山背)」と呼ばれる東の風が吹く。冷たい親潮の上を流れるため冷たく湿った性質があり、やませの影響で気温が低い日が続くと冷害をもたらすこともあるという。夏泊GLでプレーするゴルファーにとっても、やませは脅威だ。この風をいかに攻略するかがスコアメイクの肝になるのは間違いない。やませが吹くのは6月から8月頃だが、この時期以外の風も強敵だ。やませとは反対の西からの風が吹くこともあり、風向きによってマネジメントは大きく変わる。
象徴的なのが右側に海が広がる17Hのパー3ホールだ。レギュラーティからは162Yと距離が短いうえ、打ち下ろしのため7I、8Iあたりでグリーンを狙えそうだが……。海からの風がある場合は、海に向かって打たなければならなくなる。しかも、風の読みを間違えると左サイドのOBまで風で流されてしまうので要注意だ。

05 ショートアイアンの残り距離で ロングアイアンを持つ勇気はあるか 16H Par5 638Y

16Hのパー5は、正面と右サイドに海が広がるホール。やませが吹く場合はフォロー、西からの風が吹く場合はアゲインストになる。ティショットは落とし所にバンカーが点在しているため、ナイスショットを打っても風の読みを間違えればバンカーにつかまる可能性がある。また、左右のOBエリアも注意が必要だ。
グリーンを狙うショットは打ち下ろしになり、風の影響をさらに受けることになる。最上支配人の「100Yを3Wで打った」というエピソードはまさにこのシチュエーションだ。ショートアイアンやウェッジの距離が必要な状況で1、2番手変えるのはイメージが湧くが、3番手、4番手違うクラブを持つのはさすがに勇気が必要になるだろう。

06 光と影が美しさを際立たせる18H 陸奥湾と北海道を見渡す6H 18H Par4 368Y

夏泊GLは全18ホールが名物ホールといえるほど、それぞれ特徴的な顔を持つ。例えば、最終18Hはフェアウェイのアンジュレーションが豊かなホール。日が傾きかけた時間帯にプレーすると、光と影のコントラストで起伏やポットバンカーが強調され、印象的な表情が浮かび上がる。見た目には美しいが、難易度は非常に高い。
6Hの打ち下ろしパー4は景色を存分に楽しみたい。コース全体と陸奥湾が見渡せる上、海の右側には下北半島、左側には津軽半島。そしてその真ん中には北海道を望むことができる。ティショットは、左のOBに注意してフェアウェイセンターの松の木の右狙い。セカンドショットはグリーン手前が急斜面になっているので、大きめのクラブで狙うのがベターだ。

07 夏泊GL支配人が教える リンクスコース攻略法

日本人ゴルファーにはなじみが薄い本格的リンクスコース。攻略のカギを最上支配人に聞いてみた。「無理をせずにフェアウェイキープを心掛けることが重要です。ホールをセパレートする高い木がないためコースが広く見えるし、グリーンが遠く見えるんです。だからといって『飛ばしてやろう』と思い切り振るのがミスの元です」。強く打つとスピン量が増え、風の影響を受けやすくなるし、左右の曲がり幅も大きくなる。景色に惑わされずにコンパクトにスイングすることが大切だ。また、コース脇のブッシュに打ち込むのは避けなければいけないが、もしも入れてしまったときはボールが浮いているのか沈んでいるのかチェックしよう。浮いているのを知らずに打ち込むと、ヘッドがボールの下をくぐって空振りする可能性もある。さらに、グリーンは「芝目はないので傾斜を読んでください」とのこと。風が強い日はパットといえども風の影響を受けるので繊細な読みが求められる。日本に数少ない本格的リンクスコース。あなたは攻略できるだろうか。ゴルファーなら一度は訪れるべき場所だ。

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