正統派の英国調コース vs 戦略的アメリカンモダン、今日はどちらに挑む[紫雲ゴルフ倶楽部 加治川コース・飯豊コース(新潟県)]

写真:相田克己
文:Lisa Okuma (リサオ)
取材協力:紫雲ゴルフ倶楽部 加治川コース・飯豊コース

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18以上のホール数を有するゴルフ場は数あれど、そのほとんどが、たとえば27ホールなら「IN - OUT- WEST」、36ホールなら「東コースOUT/IN・西コースOUT/IN」といった表現をする。かつ、それぞれのコースに固有のデザインというよりは、1つのゴルフ場としてのまとまり感を持つ場合が多い。27ホールのゴルフ場で、あとから増設した9ホールだけなんとなく感じが違うことはあるけれど、36ホールのゴルフ場で、18ホールずつ、はっきりくっきりその個性が異なるところは少ないように思う。
ならば、新潟県にある紫雲ゴルフ倶楽部は例外中の例外。どちらも見事な赤松林に囲まれた18ホール、加治川(かじかわ)コースと飯豊(いいで)コース。かたや正統派の英国調、かたや戦略的なアメリカンモダンと、設計者もレイアウトも趣も攻めかたも難易度もまったく異なるという稀有なゴルフ場だ。

   紫雲ゴルフ倶楽部

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2015年12月に開場50周年を迎えた紫雲GCのそもそもの始まりはこの場所の地形と環境だった。「この砂丘地は素晴らしい自然環境に恵まれている。ゴルフ場開発計画を立てたら面白い」初代社長をつとめた葉山健二郎氏がこの一帯を訪れた際に漏らした一言が発端だった。最初に作られた加治川コースの設計は、霞ヶ関カンツリー倶楽部創設者のひとりで同倶楽部東コースを設計した藤田欽哉氏。土壌を動かさずに自然の地形や起伏を生かすコース設計が得意で、自然の大木を伐採せず大切にすることから、ドッグレッグホールが多いのも特徴。名門の風情漂う加治川コースでは、太く大きく成長した赤松が作り出す空中ハザードが効いており、狙い所は案外狭い。スタートホールに立った瞬間、連想したのは茨城県の大洗ゴルフ倶楽部。それもそのはず、藤田氏は大洗GCの設計者、井上誠一氏の師匠的存在だと後から知って激しく納得した。

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自然を生かしているゴルフ場にふさわしく、コースには地域の川と山の名前がついている。近くを流れる加治川と、その源流、磐梯朝日国立公園内に位置する日本百名山のひとつ、飯豊山。また「紫雲(しうん)」という名称は旧町名の紫雲寺町からだ。2005年に新発田市(しばたし)に編入して名前は消えてしまったが、そのはじまりは1735年(享保20年)、干拓によって埋め立てられた紫雲寺潟の名に由来する。

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加治川コースの設計が日本の名匠ならば、飯豊コースはアメリカの名匠の手によるものだ。美しくも厄介な起伏と傾斜を生かし、ウォーターハザード、バンカーを巧みに配した戦略性の高いコースは、アメリカゴルフコース設計家協会会長もつとめたデニス・グリフィス氏の設計だ。アイオワ州立大学でランドスケープを学んだグリフィス氏は1970年からコース設計のキャリアをスタートした。ゲーリー・プレーヤーはじめ多くの有名設計家との仕事を経て、1987年に独立してからはジョージア州アトランタを拠点に世界中のゴルフコースを設計した。有名なところでは、バンコクの超名門コース、タイカントリークラブがある。また、日本では紫雲GCのほかに群馬県のレーサム ゴルフ&スパ リゾートもグリフィス氏の事務所が手がけたものだ。

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今回、両コースのINコースをプレーしてみて、予備知識からの想像以上にそれぞれ別のコースだと感じた。飯豊コースはフェアウェイは広いが、とにかく距離が長い。レギュラーティから575yのPAR5はさておき、数字的にそれほど距離がないはずのホールで、グリーンまで遠く感じさせる仕掛けがいろいろあった。フェアウェイには刻むか挑むか悩ましいバンカーやウォーターハザードが巧みに配置されていて、脳みそは常にフル回転。329yのPAR4に、やっとパーオンできるかなと思ったら、フッカー泣かせの池とバンカーがどどーんと左サイドを覆っていたり。さらに、グリーンの傾斜もややこしく、ベテランキャディさんの助けは必須。ホールごとに特徴があり、アトラクションもあり、距離感を狂わせる目の錯覚もあり。だから、かなり叩いたというのに、遊びきった充実感に満足し、近所にあったらしょっちゅう来るのになーと思うほど好きになった。

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しかしどうやら飯豊コースは分が悪いらしい。「加治川コースを好むひとが多いんですよ」と、18ホールつきっきりでいろいろ教えてくださったコース管理部長の富田三千夫氏。「加治川のほうがスコアがでるので」。はて、なぜだろう、断然フェアウェイが狭いのに。空中ハザード満載なのに。「池が少ないでしょう。距離も短いし」。つまり、球を曲げないひとにはご褒美がある。空中ハザードは引っかからなければ関係ないので、たまたま調子が良ければ好スコアになる可能性がある。それに比べると、距離のハンデはいかんともしがたく「絶好調=全ショット50yの飛距離UP」のような数式が成立しないかぎりスコアが伸びる可能性も低いというわけだ。なるほど納得。それでも私は加治川のほうが難しいと感じた。フェアウェイにある松の木にどうしても吸い寄せられてしまうのだ。

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実は、加治川コースでのプレーが好まれる理由は他にもある。ここがトーナメント開催コースだからだ。 1983年7月「第51回日本プロゴルフ選手権」。総力を挙げて誘致した同大会は日本海側での初開催となった。優勝は中嶋常幸プロ。
そして、2008年10月には李知姫プロが勝利を掴んだ「第41回日本女子オープンゴルフ選手権競技」。結果、トッププロたちを苦しめた加治川コースは難易度の高い名門コースとして全国に知れわたった。実際この大会に出場したプロに聞いてみたら「松の木にだいぶやられた(笑)」と当時を思い出して悔しがっていた。プロでも難儀したこの大会を記念して、紫雲GCでは毎年9月末には4日間にわたりJWO(Japan Women's Open)メモリアルコンペを開催している。しかもなんと2008年大会最終日と同じホールロケーション(6,484y)に設定。お得な料金でプロ競技の凄さを体感できるのだ。

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新潟空港から30分、新潟駅から40分というアクセスのよさから、県外さらには海外のゴルフツーリズムも積極的に取り組んでいる。最近では台湾や中国からの、ゴルフだけ、観光は一切なしというツアーも増えてきた。月岡温泉、瀬波温泉などの温泉地に、宿泊施設もじゅうぶんにある。
「環境と共生し、安心して気持ちよくプレーを楽しんでもらう」のが開場以来の変わらぬ理念。「ふだんはもっとリーズナブルなゴルフ場に行くとしても、特別な日には紫雲に来たいと思ってもらいたい。そのために大事なことは、ゴルフ場の原点でもある、コースメンテナンスとホスピタリティに力を注ぐことだと思っています」と岩村正一支配人。どちらも完璧、感激しました。そしてなにより、趣の違うゴルフコースが2つある、それが楽しい。会員にとっては、2つの違うゴルフ場の会員権を所有しているのと同じこと。なんとも羨ましい。ここなら絶対に上手くなる。

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